青色申告と白色申告の違いは?それぞれのメリット・デメリットを解説
これからエステやリラクゼーション、整体を開業する人であれば、「青色申告」や「白色申告」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
しかし、「青色申告と白色申告の違いはなに?」「それぞれにどんなメリットがあるの?」「自分はどちらを選べばいい?」など、わからないことも多いでしょう。
今回は、青色申告と白色申告の違いや、それぞれのメリット・デメリット、どちらを選べばいいかをお伝えします。
(2021年11月現在の情報です)
青色申告・白色申告の違いは?
青色申告・白色申告は確定申告の方法です。
まずは、青色申告と白色申告の違いについて、以下の3点をお伝えします。
- 帳簿のつけかたの違い
- 確定申告時の提出書類の違い
- 事前の届け出の要否の違い
1.帳簿のつけかたの違い
青色申告と白色申告には、帳簿のつけかたに違いがあります。
会計処理をする際、青色申告では複式簿記で帳簿をつけることが義務づけられていますが(10万円の控除を受ける場合は単式簿記でも可)、白色申告は単式帳簿でもよいとされているのです。
2.確定申告時の提出書類の違い
確定申告時には、提出するべき書類に違いがあります。
青色申告の提出書類
- 確定申告書(B)
- 青色申告決算書
・損益計算書
・貸借対照表
青色申告決算書は、損益計算書と貸借対照表で構成されています。
白色申告の提出書類
- 確定申告書(B)
- 収支内訳書
収支内訳書は、確定申告を行う年の1月1日~12月31日までの1年間における売上や経費、仕入れなどをまとめ、所得金額を計算する書類です。
3.事前の届け出の要否の違い
青色申告で確定申告したい場合、青色申告をする年の3月15日まで(1月16日以降に新規に開業した場合は、事業開始から2ヶ月以内)に、届け出をしなければいけません。
これから開業するのであれば、開業届の提出と同時に、青色申請をするための手続きも一緒にやってしまいましょう。
その際、「開業届」と「青色申告承認申請書」を記入し、所轄の税務署に提出します。
参考記事:エステ・整体・リラクゼーションで独立開業するなら!開業届を出そう
「開業届」や「青色申告承認申請書」は、税務署でもらう方法や、国税庁のホームページからダウンロードする方法、用紙を使わずe-Taxから電子申請する方法があります。
ご自分のやりやすい方法を選びましょう。
国税庁HP:個人事業の開業届出・廃業届出等手続
何も提出しないでいると、自動的に白色申告者となります。
白色申告をしたい場合は、必要な届け出はありません。
ただし、今まで青色申告をしていた人が白色申告に切り替えたい場合、切り替えたい年の翌年3月15日までに、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を所轄の税務署に提出する必要があります。
個人事業から法人化する場合や、廃業のために青色申告を取りやめたいのであれば、「個人事業の開業・廃業等届出書」も一緒に提出しましょう。
国税庁HP:所得税の青色申告の取りやめ手続
青色申告のメリット・デメリット
青色申告と白色申告の違いがわかったところで、それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
まずは、青色申告から。
青色申告のメリット
青色申告には、次のようなメリットがあります。
- 青色申告特別控除が受けられる
- 純損失の繰り越し控除が受けられる
- 家族へ支払う給料を経費にできる(青色専従者給与)
- 少額減価償却の特例が受けられる
- 家事按分できる
ひとつずつ見ていきましょう。
青色申告特別控除が受けられる
青色申告特別控除とは、最高65万円を総所得金額から控除できる制度です。
エステやリラクゼーション、整体の事業をしている人が青色申告特別控除を受けるには、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を併せ、確定申告の期限内に提出する必要があります。
複式簿記で記帳していない(単式簿記で記帳している)場合は最高10万円の控除、複式簿記で記帳した場合の控除額は55万円です。
複式簿記で記帳し、e-Taxで電子申告、または電子帳簿保存を行うと、最大の65万円の特別控除が受けられます。
※電子帳簿保存は、税務署の事前承認が必要です。
純損失の繰り越し控除が受けられる
赤字の年に損失申告をすると、翌年以降の最長3年間の所得から差し引くことができます。(純損失の繰越控除)
また、前年度も青色申告をしてれば、本年度の赤字を繰り戻して控除し、所得税の還付を受けることも可能です。(純損失の繰戻控除)
家族へ支払う給料を経費にできる(青色専従者給与)
青色申告では、家族へ支払う給料を一定の範囲内で経費にできます。
経費が増えれば所得が減るため、節税になるでしょう。
ただし、
- 青色申告者と生計を一にしている
- 業務に従事している
- 15歳以上の親族である
- 「青色事業従事者給与に関する届出・変更届出書」を提出している
といった条件があります。
青色事業専従者として給与をもらう人は、控除対象配偶者や、扶養親族にはなれません。
国税庁HP:青色事業従事者給与に関する届出手続き
少額減価償却の特例が受けられる
10万円以上の備品で、1年以上の長期にわたって使用する備品(固定資産)は、通常では減価償却の処理をします。
しかし、青色申告者であれば、30万円未満の備品を「少額減価償却資産」として、購入した年に全額経費に計上できます。
ただし、この特例は2006年4月1日から2022年3月31日までに購入した減価償却資産が対象となっており、年間の合計額が300万円までとなっているので注意しましょう。
家事按分できる
家事按分とは、自宅サロンを経営している場合の家賃や光熱費の一部は売上の為の必要経費であるとの考えから、事業にかかった経費を合理的な基準によって分けることです。
事業に必要なことが説明できれば、電気代・ガス代・自動車関連費用なども経費にできます。
青色申告のデメリット
たくさんの控除が受けられる青色申告ですが、以下のようなデメリットもあります。
- 白色申告に比べて帳簿作成が複雑
- 青色申告は事前申請しなければいけない
白色申告に比べて帳簿作成が複雑
「青色申告は会計処理が大変」という話を聞くとおり、白色申告に比べて帳簿作成が複雑です。
「青色申告と白色申告の違い」のところでもお伝えしましたが、白色申告は単式簿記で記帳すればいいのに比べ、青色申告で最大65万円の控除を受けるには複式簿記で記帳しなければいけません。
複式簿記とは、現金の動きだけでなく、現金が動いた原因も記録していくため、少々難易度が高くなります。
また、青色申告をする場合は「貸借対照表」や「損益計算書」など、作成・提出しなければならない書類も多いのが特徴です。
そのため、青色申告の方がメリットが多いことをわかっていながら、白色申告を選んでいると言う人もいます。
青色申告は事前申請しなければいけない
「青色申告と白色申告の違いは? 事前の届け出の要否の違い」でもお伝えしたとおり、青色申告をしたい場合は、その年の3月15日までに所轄の税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
1月16日以降に新規で開業する場合、事業開始日から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を提出しましょう。
期限を過ぎてしまうと、いくら青色申告をしたくても認められませんので、その年度は白色申告者となってしまいます。
白色申告のメリット・デメリット
ここからは、白色申告のメリット・デメリットをお伝えしていきます。
白色申告のメリット
白色申告には、
- 事前申請しなくてもよい
- 青色申告に比べて帳簿付け・申告が簡単
というメリットがあります。
事前申請しなくてもよい
白色申告で確定申告したい場合、とくに必要な申請はありません。
開業届を提出する際、「青色申告承認申請書」を提出しなければ、自動的に白色申告者となります。
青色申告に比べて帳簿付け・申告が簡単
白色申告は単式簿記で良いため、帳簿付けがとても簡単です。
また、確定申告の際は、収支内訳書に売上や経費を記入するだけ。
青色申告の帳簿付けの複雑さや、確定申告時の提出書類の多さからすると、とても手軽にできてしまいます。
白色申告のデメリット
「青色申告の帳簿付けが難しいなら、白色申告にしてしまおうか…」そう思っているなら、白色申告のデメリットをよく考えてみてください。
白色申告には、
- 青色申告にある控除が受けられない
- 赤字の繰り越しができない
というデメリットがあります。
青色申告にある控除が受けられない
さまざまな控除が受けられる青色申告とは違い、白色申告では受けられる控除が限られてしまいます。
とくに最大65万円もの控除が受けられる「青色申告特別控除」がないのは、大きいでしょう。
白色申告で受けられる控除は「基礎控除」のみです。
基礎控除は全ての納税者に適用されるもののため、「白色申告だから受けられる」という控除ではありません。
白色申告でも青色申告でも、一律38万円(2020年分以降は、所得が2,400万円以下で、控除額48万円)が控除されます。
このように、白色申告には、青色申告にあるさまざまな「控除」という特典がないため、所得が増えるほど負担すべき税金が増えてしまうのです。
赤字の繰り越しができない
白色申告の2つ目のデメリットとして、赤字の繰り越しができないことも挙げられます。
「青色申告のメリット」として、青色申告では3年間赤字を繰り越せるため、黒字になったときの税負担を軽くすることが可能という話をしました。
しかし、白色申告では赤字を繰り越すことができません。
赤字と黒字を繰り返してしまうと、差し引きできないため、結果としてたくさんの税金を払わなければいけなくなってしまうのです。
エステ・リラクゼーション・整体なら青色申告・白色申告どちらがいい?
エステやリラクゼーション、整体を開業する人は、青色申告・白色申告どちらを選ぶといいでしょうか。
それは、断然「青色申告」です。
青色申告と白色申告のメリット・デメリットを見ると、圧倒的に青色申告の方がメリットが大きいことがわかるでしょう。
「でも、やっぱり複式簿記は難しそうだから…」
と思っているのであれば、「会計ソフトを使う」という方法があります。
会計ソフトを使えば、日々の収支を家計簿感覚で入力しておくだけで、青色申告に必要となる帳簿を自動で作成できるようになっています。
また、2014年分からは、白色申告者であっても「帳簿への記帳」と「帳簿等を5~7年保存すること」が義務付けられました。
そう考えると、手間の差ははほぼ無くなっているため、青色申告をしない理由はありませんね。
それでも
「控除は受けなくてもいい。複式簿記や提出する書類が多いのはイヤだ。」
などであれば、白色申告でもよいでしょう。
まとめ
今回は、青色申告と白色申告の違いや、それぞれのメリット・デメリット、エステやリラクゼーション、整体を開業するにはどちらを選べばよいかをお伝えしてきました。
青色申告で最大65万円の控除を受けるには、複式簿記という複雑な方法で記帳しないといけなかったり、提出する書類が多かったりするため、大変に思う人も多いでしょう。
しかし、青色申告は手間がかかる分、たくさんの控除を受けられるのです。
そのため、エステやリラクゼーション、整体で開業するなら青色申告をおすすめしました。
会計ソフトを使えば、簡単に帳簿を作成できますし、ハードルはかなり下がっているはずです。
賢く節税したいなら、青色申告を選びましょう。